考古学vsモルモン書
モルモン書の批判に接したことがある方には今から述べることは既知のことでしょう。私にとっても今更のことなのですが、これは避けては通れない事実なのです。
考古学、歴史学の攻撃にモルモン書には耐えられません。
モルモン書には当時アメリカ大陸に存在しなかった動植物鉱物などが登場します。これだけでモルモン書がインチキだという証明になります。以下、列記してみましょう。
1. 家畜・動物(生態系の矛盾)
古代アメリカのニーファイ人、レーマン人たちが「飼育し、生活や戦争に役立てていた」とされる動物たちですが、これらはすべて1492年にコロンブスがヨーロッパから持ち込むまで、アメリカ大陸には一頭も存在していませんでした。
- 馬(Horse): モルモン書(アルマ書20章など)では、戦車を引かせたり、移動手段として頻繁に登場します。古代アメリカに馬はおらず、ネイティブアメリカンが馬に乗るようになったのはコロンブス以降です。
- 牛(Cattle / Oxen): 食用や農耕用として登場しますが、当時のアメリカには野生のバイソン(バッファロー)しかおらず、家畜としての牛は存在しませんでした。
- ロバ・ラバ(Ass / Mule): 荷役用として登場しますが、これもヨーロッパからの外来種です。
- 豚(Swine): 家畜化された豚は存在しませんでした。
- ヤギ(Goat): 家畜としてのヤギはいませんでした(野生のマウンテンゴートはいましたが、家畜化は不可能です)。
2. 金属・テクノロジー(文明度の矛盾)
モルモン書には、鉄や鋼、真鍮などの高度な冶金(金属精錬)技術が登場し、それらで作られた武器やドーム、道具が描かれています。しかし、当時の古代アメリカ文明(マヤやインカの前駆文明など)は基本的には「石器時代」から「初期の青銅・金銀の装飾技術」の段階であり、鉄器文明は存在しませんでした。
- 鉄(Iron)と鋼(Steel): ジョセフ・スミスは、ニーファイ人が「鋼の弓」を使ったり「鉄の道具」を作ったと書きました。しかし、古代アメリカで鉄を溶かして精錬する巨大な炉(高炉)やその遺跡は、北米・中南米のどこからも一切見つかっていません。
- 真鍮(Brass): ジョセフたちがエルサレムから持ち出したとされる「真鍮の版」などでお馴染みですが、銅と亜鉛 of 合金である真鍮の製造技術は、当時のアメリカ大陸にはありませんでした。(旧大陸ではほんの数件偶然に生成された真鍮はありましたが、それは粒状板を作るなどは不可能でした)
- 戦車・馬車(Chariot): モルモン書には王が戦車に乗るシーンがあります。しかし、古代アメリカ文明の最大の謎の一つは「車輪(車輪を使った実用的な乗り物)を発明・使用していなかった」という事実です(子供のおもちゃとしての車輪はありましたが、実用化はされていませんでした)。馬も車輪もないため、戦車など存在し得ません。
- コイン(貨幣システム): アルマ書11章には、金や銀の精緻な貨幣システム(セヌム、アムノールなど)が名前付きで詳しく登場します。しかし、古代アメリカの交易はすべて物々交換、またはカカオ豆や織物などを通貨代わりにしたものであり、金属を鋳造したコイン(硬幣)は存在しておらず、遺跡からも1枚も見つかっていません。
3. 農作物・テキスタイル(食料・衣服の矛盾)
中東のユダヤ人がアメリカに渡ってきて、元の文明と同じように栽培したとされる作物や衣類ですが、これらもすべて外来種です。
- 小麦(Wheat)と大麦(Barley): モルモン書では主要な農作物として収穫されていますが、当時のアメリカ大陸の主食は100%「トウモロコシ(マイス)」やジャガイモ、豆類であり、小麦や大麦は存在しませんでした。
- シルク(絹 / Silk): 高級な衣類として登場します(アルマ書1章など)。しかし、シルク(蚕から採る絹)は中国からシルクロードを経てヨーロッパに伝わったものであり、古代アメリカに絹織物の技術はありませんでした。
- リネン(亜麻布 / Linen): 衣服の素材として登場しますが、植物の亜麻(リネン)も当時は栽培されていませんでした。
4. 宗教・言語・その他の概念
- シナゴーグ(会堂 / Synagogue): モルモン書には、ニーファイ人たちが「シナゴーグ」に集まって礼拝するシーンがあります。しかし、「シナゴーグ」という言葉とシステムがユダヤ社会に定着したのは、彼らがエルサレムを離れた(紀元前600年)よりもはるか後、バビロン捕囚期以降のことです。
- 改良エジプト文字(Reformed Egyptian): 金版に記されていたとされる言語です。言語学・考古学において、エジプト文字とヘブライ語が融合したこのような言語がアメリカ大陸の先住民の間で使われていたという証拠(碑文や土器の文字)は、1文字たりとも発見されていません。先住民の文字はマヤ文字などの全く異なる系統です。
モルモン教サイドはこれらの学術的批判にどのように応えているのでしょうか。
概ね三つの方法に限られます。
① 「限定地理説(Limited Geography Model)」
モルモン側の主張:
「モルモン書に登場する全滅戦争や文明の舞台は、アメリカ大陸全体(北米から南米まで)の話ではない。実は中米のマヤ周辺など、ごく狭い限定的な地域(数百キロ圏内)だけで起きた出来事なのだ」
狙いと矛盾点:
こう主張すれば「アメリカ大陸全体を探して遺跡が出ないのは当たり前」と言い訳できます。しかし、これまでの公式な教義では「先住民全員がレーマン人の子孫(モルモン書のタイトルページに明記)」とされていましたし、ジョセフ・スミス自身も「ニューヨーク州のクモラの丘で最終決戦があった」と語っていたため、ジョセフの言葉や本来の教義と真っ向から矛盾する、苦肉の「後付け理論」です。
② 「名前のすり替え(言語の借用)理論」
モルモン側の主張:
「モルモン書にある『馬(ウマ)』や『牛(ウシ)』『鉄』という言葉は、現代の私たちが知っている動物や金属のことではない。新大陸に渡ったリーハイ一族が、現地にいた未知の動植物を見て、自分たちの知っているエルサレムの言葉(馬や牛)を便宜上当てはめただけだ」
具体例:
・ウマ ➡ バク(獏) や タピール のことだった。
・ウシ ➡ バイソン(野牛) や ヤギ のことだった。
・鉄、鋼 ➡ 黒曜石(石器)や、他の何らかの合金のことだった。
「タピールが戦車を引っ張っていた」というあまりにも無理のある絵面を正当化しようとしており、アメリカの脱会者の間では今でも爆笑を誘う最大のツッコミネタ(ミーム)になっています。擁護論者は恥ずかしくないのでしょうか?